ロストマン(BUMP OF CHICKEN)
さて今回はBUMP OF CHICKENの「ロストマン」です。
この曲はミスチルの桜井さんがボーカルを務めるBankbandにもカバーされ、方々から名曲と名高い楽曲です。
まさしく藤原ワールドが凝縮された、BUMP OF CHICKENらしさが詰まった楽曲ではないでしょうか。
この名曲について、今回はお話しさせていただきます。
「決別」の唄
表面だけのなぞれば失恋した男の唄。
しかし見る人が見れば「何か」に対して決別を告げ、新たな一歩を踏み出す男の唄です。
もちろんその「何か」に恋人を当てはめることも良いと思います。
ただ前回もお話ししたように藤原さんは非常に「比喩表現」を多用します。
(その理由はまたいずれ詳しく話せたらと思っていますが、簡単にいうと言葉に出来ない思いなどを表現するのが音楽と位置付けていて、それを表現するために何かに例えているとのことです。)
ですので今回もそのまま受け取るというよりは、一歩踏み込んで聞いてみるとまた違った印象を受けます。
ちなみに僕は「夢」を想像しました。
失ったのは夢。
それを自分から手放したのかどうかはわかりませんが、
思い描いていた目的地とはかけ離れてしまった今、そしてもう取り戻せないであろう「夢」に対して力強く決別を誓った唄に、僕は聴こえます。
迷子って気づいていたって 気づかないフリをした
「もう自分は大丈夫」そうやって大丈夫じゃない自分に言い聞かせて、何かを諦めた、、、そんな男の登場で、この物語は始まります。
今、過去、そして未来
藤原さんの詩には常々「今」という言葉が出てきます。
「今」をとても大切に、尊いものとして考えているのでしょう。
僕らが生きているのは「今」であり、「今」はいつか「過去」になる。
そして「今」でとった行動はいずれ「未来」での自分になる。
これが僕の望んだ世界だ そして今も歩き続ける
主人公が途方に暮れているこの世界、それは自分が望んだ世界なんだ、、、そう言っているように聞こえます。
自分の身に悪いことが降りかかれば、それを何かのせいにしたくなります。
しかし振り返ってみればそれは「過去」の自分が起こした行動により作られた「未来」。
つまり「過去」の自分が「望んだ」世界だと表現しています。
かなり強めの言葉だなと、、最初はそう感じました。
「今辛いのはお前のせいだろ?」そう言われている気がしました。
もちろんそれは思い当たる節があるからそう思うんだと思います。
しかし聞く人が聴けばそれはとても鋭く突き刺さる言葉でした。
主人公はそんな思い、気づきを受け入れ、それでも歩いていくことを決めたんです。
君を失ったこの世界を愛せたときは会いに行くよ
ここが出発点踏み出す足はいつだって始めの一歩
ここまでロックな歌詞があるのか、そういう衝撃を受けた記憶がある歌詞です。
主人公は最後に全てを受け入れ、生きていく決断をします。
過去の自分の影には別れを告げ、新たに決めたスタートラインから新しい一歩を踏み出します。
一つ壁を超えた勇者の話のように聞こえますが、こんなに日常に寄り添う歌詞があるのか、、、、初めて聴いた時は涙が出たのを覚えています。
全てを受け入れる。。。それはとても悲しく、切なく、辛く、、、とても簡単なことではありません。
これまで選んできた道のりは全て間違いだったのか、、、、そんなことを考えるとこの世界も嫌いになるでしょう。
君を失ったこの世界を愛せたときは会いに行くよ
しかし主人公はこう唄っています。
「簡単に受け入れられなくていいよ、それが普通なんだよ」
「ゆっくりでもいいから、また会いに行こうよ」
そんな言葉がたくさん浮かびました。
誰もが小さい頃に思い描いた未来にたどり着くとは限りません。
むしろ辿り着ける人の方が少ないと思います。
そんな世界は好きじゃないかもしれないけれど、少しでも好きになれたらあの頃の自分に会いに行こう。
そんなことを考えると、楽曲が終わる頃にはまた一歩を踏み出す勇気をくれる。
ロストマンという楽曲にはそんな力があるんだと思います。