ダンデライオン(BUMP OF CHICKEN)
今回はBUMP OF CHICKENの「ダンデライオン」です。
藤原さんの書く歌詞には動物が主人公になる楽曲がいくつかあります。
そういった類の曲ではいつもの心に踏み込んでくる歌詞、、、というよりは、お母さんが読んでくれる童話の世界のような、、、そんな伝わり方がしてくる楽曲が多いです。
今回の「ダンデライオン」もそういった曲になっています。
孤独な獣王
主人公は百獣の王、ライオン。
この曲はライオン視点で描かれています。
曲自体はカントリー調で、とても明るい雰囲気で進んでいきます。しかし、とても孤独なライオンの歌詞です。
まずこのギャップに僕の心は一瞬で奪われました。
個人的にですが、悲しい歌詞を寂しげなメロディーで歌われるよりも、悲しい歌詞を明るめなメロディーで歌い上げられると泣いてしまいます、、、
(ちゃんとその曲の持つキャラクターがぴったりあっていればですが、、、)
この曲を聴いていると大人になった時に絵本を読んだ時の感覚に似ています。
とても純粋無垢な世界が語られていて、いつの間にか忘れてしまったような感覚が不思議と蘇ります。
難しい言葉や、突き刺さる言葉が出てくるような楽曲ではありません。
しかし、何か響くものがあります。
前回書きましたが、藤原さんは「言葉にできない何かを伝えるために曲を作る」と言っていたことがあります。
この曲はまさにそれの真骨頂とも言える楽曲ではないかと思います。
とても温かい物語
こちらの楽曲は人それぞれの見解というよりは、本当に物語を読む感じです。
そしてこの物語がとても悲しいけれど、とても心温まるストーリーなんです。
寂しがるライオンが自分の姿に似たタンポポと出会い、初めて友情にも恋にも似た感情を抱きます。
ライオンは自分の子の姿を見て怖がらないやつは初めてだと、とても嬉しくなります。
それからタンポポとともに過ごすうちに、ライオンは事故で瀕死の状態に陥ってしまいます。
「自分は死ぬんだ」そんなことを思いました。
しかしあいつを泣かせるものか。
ライオンは最後の力を振り絞って、元気な声を吠えます。
タンポポに届くようにと。
ライオンはそこで息絶えてしまいますが、
その後、ライオンが落ちた谷底には、たくさんのタンポポの花が咲きました。
ライオンは実はとても心優しかったのですが、見た目のせいで怖がられ、誰とも仲良くせず生きてきました。
ライオンのセリフで
お前のような姿になれれば愛してもらえるかな
本当はみんなに愛して欲しかった。
でも自分みたいな姿ではみんなに愛してはもらえない。
そう思っていたのでしょう。
この楽曲は物語を読むだけ、、、そう言った類の発言を先ほどしましたが、ここの文章はかなり僕らにも重なるところのある詩ではないかと思います。
誰かを羨んだところでその人になれるわけではありません。
ですが、自分がどう思っていようが、自分のことを愛してくれる人は必ずいるはずです。
ライオンにとってタンポポはそういう存在だったのではないでしょうか?
自分自身がどう思うかで変わる景色
しかしタンポポは言葉も話さなければ、表情を浮かべるわけでもありません。
つまり全てはライオンの思い込みとも言えます。
しかしそれでもライオンは幸せそうに見えませんか?
僕は見えます。
人々はよく神様に祈りを捧げます。
しかし誰も神様を見たことはありません。
それでも良いことがあれば神に感謝し、悪いことがあれば神に助けを求めます。
すがる事のできる何かがあれば、きっと救われる人はいるんだと思います。
たとえそれがなんであれ、本人が幸せであれば、それを他人がとやかく言えるはずがありません。
ライオンは最後の時を温かい涙で迎えます。
それは今まで一人ぼっちで生きてきたライオンが、初めて出来た友達に感謝し、そして幸せだったからこその涙だったのではないかと思います。